Interview: New Tendency (Manuel Goller) -ミニマリズムの再定義-

Interview: New Tendency (Manuel Goller) -ミニマリズムの再定義-

ニュー・テンデンシー(New Tendency)はバウハウスを考えを根底におき、コンテンポラリーな意識をもつブランドであり、近年世界的にも注目を集めています。彼らから生み出される作品は、シンプルで機能的な製品であるだけでなく、一つのオブジェとしても特徴的です。時には建築からインスピレーションをもらい造形や色に落とし込んだりと、ディレクターのマニュエル・ゴラー(Manuel Goller)の感性やアーティストとのコラボレーションによって出来上がるデザインは、バウハウスの意思を受け継ぎながらも新しい価値観をもたらしています。 Gallery Communeでの展覧会の為に来日したマニュエルへインタビューをしました。

まず最初に、New Tendencyについて教えてください。

New Tendencyはベルリンに拠点を置く家具ブランドです。私たちはのコレクションは、自らのスタジオでデザインしたオリジナル製品と、建築家やアーティストなどの様々なコラボレーターと協力して作り上げています。ブランド自体はバウハウス大学の学生としてスタートし、その後ベルリンに移転して現在の拠点となりました。私たちはバウハウスの名前だけでなく、その本質的なアプローチを大切にしています。

 

今回、どういった理由で東京に来られたのでしょうか?

現在、東京にあるGallery Communeで展示会を開催しており、メインはそのために来ました。今までのコレクションの一部と新たに開発したスツールのシリーズを展示しています。東京は今回で2回目ですが、一つのマーケットとして興味深いだけでなく、インスピレーションをもらえる場所です。日本の文化においても、手工芸の品質、食事の準備に至るまで、日常的な場面にこそ触発されます。

歴史的にも、日本の文化はブルーノ・タウトのようなヨーロッパの建築家やデザイナーに魅了されています。彼は日本を訪れた最初の建築家の一人で、20世紀初頭にヨーロッパでのデザインのアプローチに統合するためのその経験と知識を持ち帰りました。別の時代の話ですが、他の文化を経験することでインスピレーションを得るこのプロセスが、どこか似たような価値観を生み出していて強いつながりを感じています。

日本では工芸が文化に深く根付いていることから、今後日本の職人と協力して何か現代的な作品を作ってみたいですか?

はい、とても興味があるので作ってみたいです。細部に対するこだわり、品質、そして物への愛情がある事を尊敬しています。探求したい技術は多くありますが、その中でも「漆器」はいつかコレクションに取り入れたいと考えています。天然素材でありながら高級感があり、耐久性もあるというのがとても魅力的で、私たちの核となる価値観の一つでもあります。New Tendencyではシンプルかつ長持ちする素材を使う事で、私たちなりのサステナビリティを取り組んでいます。日本の工芸品に保たれている品質と美学は、恐らく物を大切にする感覚から派生しているのだと思います。

ベルリンと東京、それぞれの都市の興味深いと思うところや共通点はありますか?

東京に似て、ベルリンもまた広い都市です。市内には個性的な地域が散在しており、パリのように全てが中心に集まっているわけではありません。都市の中には色々なネイバーフッドがあり、スタイルや食事、ファッションで異なる体験ができます。分散したコミュニティーは多様性に溢れ、新しい傾向や活動が起こりやすくなります。それが両方の都市での創造性の源泉となっているんだと思います。

過去のインタビューで、New Tendencyはチームとしては少人数で仕事をされていると言われていました。メンバーと日々仕事されているスタジオのスペースについて是非教えてください。

そうですね。スタジオメンバーの他にも、グラフィックデザイン、写真、製造から倉庫などの面で共同して外部とも連携しています。私たちはこういった分散型のアプローチをする事で商品の開発に専念できています。

今いるスタジオには2年前に移転しました。建物は、ジョハンナ・マイヤー・グロブリュッゲとサム・チャーメイエフという建築家が設計したものです。ベルリンでも数少ない、所有者自身がデザインをし、その建物にも住んでいる集合住宅です。自由なフロアプランやレイアウトで、アーティストやギャラリーのような創造的な人々を引き寄せるように設計されています。 

New Tendencyが持つユニークさの中には「色」の取り入れ方があると思いますが、素材に足して色を取り入れるときにはどのように決めているのですか?

色はその時々によって変わります。今のカラーパレットは、私がメキシコシティで見た20世紀初頭のメキシコの建築家、ルイス・バラガンの家からインスピレーションを得ています。家の中には吹き抜け階段があり、踊り場の部分の壁には真鍮のアートワークが飾られており、窓から入る自然光を反射して空間に金色の光が差しています。ジオメトリックな造形とその個性ある色使いが特徴的で、それらの要素を日常のオブジェクトに落とし込むことを目指しました。

これまでオリジナルのデザインと共に、Judith Haase and Pierre Jorge Gonzalez, Sigurd Larsenなどのデザイナーとのコラボレーションで商品となったものもありますね。デザインのプロセスにおいて、共同制作の場合と比較して自主制作の場合とでは何か違いかありますか?

プロジェクト毎に変わりますね。時には私たちからブリーフを渡す時もありますし、コラボするアーティストやデザイナーがすでにアイデアを持っていて、それを弊社のコレクションに合うように調整していく作業をする事もあります。

最新の作品であるAyo Stoolはジュディス・ハースとピエール・ジョルジュ・ゴンザレスによるデザインで、コレクションに再び木材を取り入れました。使用された無垢のオーク材のシャープさとボリューム感あるフォルムは既存の金属のプロダクトとも相性が良いです。建築家である彼らにとって、これは初となる製品化された家具になります。こういった形で関われるのは非常に嬉しく、常にコラボレーターにとっても何か新しい取り組みになるようにしていきたいと思っています。

次にコラボしてみたいクリエイターやブランドはいますか?

これまでも様々なブランドとコラボしてきましたが、引き続き色んな方々とやっていきたいと思っています。つい最近だとLA発祥のブランドMad Happyと新しいコラボをし、近日それについての発表もあります。

デザイン以外で、熱意を持って取り組んでいる事や趣味はありますか?

アートにはとても興味があり、自分の尊敬するアーティストの作品をいくつか集めています。また、都市から離れてアウトドア活動を楽しむことで、仕事と生活のバランスを保つようにしています。自然の中で過ごすためにベルリン周辺をハイキングする事もあります。

New Tendency Web / IG

Interviewer: Yusho Nishioka

サウンド、静寂、喜びの極致。

音楽に没入する。自分だけの静寂な世界に浸る。どんな楽しみも思いのままに。サウンドからデザインまで、深さ、ディティールそして喜びを極めたBeoplay H95。