
Interview: Ronan Bouroullecによる巡回展 -Dessins Quotidiens -
Ecalはスイスのローザンヌに位置するデザイン学校だ。この学校では外部の現役のデザイナー、写真家、芸術家、そして映画監督を招待し講義を開いたり、学外研修及び展示会や成果展をスイス国内外ですることも盛んだ。東京では、昨年の恵比寿映像際に、Ecalの写真学科の生徒の作品の展示が行われたことが、記憶に新しいのではないだろうか。
3月、Ecalに招かれたのは、ロナン・ブルレックだ。彼は、エルワン・ブルレックと共に様々な企業とコラボレーションをしながらプロダクトデザインを行ってきた。ロナン・ブルレックはデザインだけでなく、ドローイングの制作も意欲的に行っており、ドローイング作品のみの出版や展示も行っている。今回はEcalにて行われている巡回展「DESSINS QUOTIDIENS」を記念し、Ecalを尋ねていた日本にも関わりのある彼にインタビューを行った。
- まず展示について教えてください。
ドローイングは私にとってとても重要です。と言うのも、ドローイングを描くとき、とても喜びを感じるからです。私は目的を設定せずにドローイングすることが好きなんです。大抵の場合、アイディアと目的なしに、紙の真ん中から描き出します。これは私のデザインアプローチとは大きく異なっています。デザインをする時は構造的な方法論で仕事をすることが多いからです。なので、ドローイングは、私の健康にとっても大事なものだと言ってもいいかもしれません。
- ドローイングのディティールがとても繊細なことが、印刷された本やポスターを通じてではなく、オリジナルの作品を見るとよく伝わってきます。
ドローイングのテクスチャーに注目してみると、木を彫刻刀で掘った時にできるようなディティールものもあると私は感じます。
- 印光沢感のある紙にもドローイングされているんですね。
そうなんです。なので止まることなく素早く描くことができるんですよ。ドローイングにおいて、表層と点が触れ合うことについて考えることはとても重要であると感じます。紙の深さはとてもドローイングの印象を変えますからね。
- サイズやフォーマットは、何種類という形で決まっているのですか?
場合によります。初期はスケッチブックにのみドローイングを描いていたのですが、時が経つに連れ、より大きな紙に描くようになりました。私は実はラッキーだったんですよ。スタジオの前には印刷工房があって、多くの素晴らしい紙が捨てられていたんです。最初の頃は、そのような紙を拾ってきてドローイングも描いたりしていました。
-ボールペンを使われて描かれているものもありますね。
ボールペンで描くこともありますが、私は本当に多くの日本のフェルトペンを使うんですよ。日本のフェルトペンの色のバライティの多さがとても好きです。
- 日本についての言及がありましたので、質問なのですが、日本のプロフェッショナルな方と働くことが多かったロナンさんにとって、日本以外では経験できないと感じることはおありになりますでしょうか?
そうですね、私は彼此35年ほどの付き合いが日本とあります。1998に日本で初めての展示を行いました。なぜだか分かりませんが、日本との強いつながりを感じていて、日本に行けること、そしてそこで仕事ができることが幸せなんです。幸運なことに、異なる様々なことを経験することが日本でできました。漆職人と働いたり、イッセイミヤケのデザインチームの皆さんと働いたり、陶芸家の方とも働いたことがありますし、様々な分野の職人やデザインチームの方と働きました。テクスチャーに対する繊細さが彼らにはあって、日本以外では見つけることのできない、たくさんの技術があったりしますよね。デザイナーとして、やはり日本でそのような方々と仕事ができるチャンスがあるということはとても幸せなことなんです。
- 鉛筆で描かれたドローイングがフレームによって分けられているがとても興味深いです。
私は全てのドローイングのための額を作るのも好きなんです。外枠はとても薄いメタルで、内側にまた別の額が入るという構造で制作しています。近頃は、木に薄い切り込みを入れ、切り込みを堺にペイントする色を変え、以前から作っている額と似たようでいて、実は異なる額を制作しています。
- プロダクトをデザインするときと、ドローイングをするときの関係性や、お互いの影響はロナンさんにとってどのようなものなのでしょうか?
実は私自身もよくわかっていないんです。私は私がやりたいことをするというチャンスに恵まれていました。ラッキーなことに18歳の時には既に展示をすることもしていましたし、誰かのために働くという経験がありません。私は異なることをすることがとても好きなんですが、私がデザイン学生だった時は、とても難しい時期でした。なぜなら当時、デザイナーはデザイナー、アーティストはアーティストという形で他のジャンルにジャンプすることが許されないような雰囲気があったためです。今の時代はそのようなジャンプが受け入れられ、朝にドローイングをし、午後はプロダクトデザインの仕事をするいうような異なるジャンルの両立ができますよね。私は異なることを同時に行うことがとても喜ばしく感じますし、もう異なる分野に興味を持って活動を行うことや視点を持つことを罪悪感を感じていませんよ。
- そのような意見を聞くことができて、とても勇気付けらられました。
私は多くの人がそうであるべきだと感じています。
Ronan Bouroullecは、フランスのデザイナーで、兄弟のErwan Bouroullecと共に「Bouroullec兄弟」として知られています。1999年にパリで設立したスタジオは、家具、インテリア、プロダクトデザインなど幅広い分野で活躍し、VitraやMagisなどの国際的なブランドとコラボレーションしています。彼らのデザインは、シンプルでエレガントなミニマリズム、モジュラーシステムの柔軟性、自然からのインスピレーションが特徴です。代表作には、植物の形をした「Algues」、メッシュ素材の「Slow Chair」、モジュラーオフィスシステム「Workbays」があります。最近のプロジェクトには、レンヌの公共空間デザイン「Cercles」やメキシコシティのフリーダ・カーロ博物館の家具シリーズ「Ropero」があり、現代のライフスタイルに適応した革新性と美しさで高く評価されています。
協力
記事