Interview: Atelier CRAFT - つなぎ直し、組み替え、つくり続ける

Interview: Atelier CRAFT - つなぎ直し、組み替え、つくり続ける

アトリエ・クラフトは、建築・インテリア・プロダクトを横断して活動する、パリを拠点とするデザインスタジオです。控えめでありながら表情のある表現を特徴とし、素材やものづくりのプロセス、そして場所や文脈が、日常の空間にどのように関わってくるのかを探っています。手仕事とセミインダストリアルな製造工程を行き来しながら、「手」「つくり手」「素材」を大切に据え、精度の高い、どこか人の気配を感じさせる仕事を生み出しています。また、素材を無駄にしないものづくりにも関心を持ち、新たな活かし方の可能性に丁寧に向き合っています。

この度はインタビューのお時間をいただきありがとうございます。まずは自己紹介と、アトリエ・クラフトについてお聞かせいただけますか?

Atelier CRAFTは、建築を図面だけで終わらせたくなかった建築家、デザイナーには向かないと言われた3Dモデラー、そして別の仕事からものづくりへと飛び込んだビジネススクール出身のメンバーの3人で立ち上げました。

2016年の設立当時、私たちが共通して感じていたのは、「つくること」と「素材に触れること」が、実務の中で分断されているという違和感でした。だからこそ、描いたものは自分たちの手でつくり、つくったものは自分たちの手で描く姿勢をずっと大切にしています。

現在は6名のチームとなり、建築やデザイン、展示空間の仕事を中心に、文化施設や店舗、公共性のあるプロジェクトなど、さまざまな分野で企画から制作までを行っています。これまでに手がけたプロジェクトは100件を超えます。

Photo by Maxime Massare

これまでのご経歴について教えてください。アトリエを立ち上げる前は、どのような活動をされていましたか?

Roman:
パリ・ラ・ヴィレット国立建築学校を卒業後、「コンパニョン・デュ・ドゥヴォワール」にて木造建築を学びました。卒業後は、ライブ音楽とビジュアルアートを横断するイベントを企画するコレクティブ「les Hydropathes」の立ち上げに参加しています。建築の設計から実際の施工までを手がける立場から、素材や手の動き、人と空間の関係性に新たな可能性を探っています。2016年より、atelier CRAFT の共同創設者・ディレクターを務めています。

Minh:
Strate Collège School of Design にてプロダクトデザインを学び、特に造形・モデリングを専門としました。キャリア初期には Cartier にてアクセサリーデザイナーとして勤務しました。その後、Arnold Goron のアトリエにて約2年間、Isabel Marant のショーウィンドウのための手づくりの立体作品制作に携わっています。並行して、ファッションやラグジュアリーブランド向けに、インスタレーションや空間演出、セットデザインのプロジェクトを自身の名義で展開しています。2016年より、atelier CRAFT の共同ファウンダー・ディレクターを務めています。

Lucas:
ISEG にてビジネスとマーケティングを学んだ後、Nixon やパリのコミュニケーションエージェンシーにてブランド戦略に携わりました。石工の祖父と彫刻家の父のもとで育った経験から、空間や形への感覚を自然と身につけています。デザイン分野へ転身後 atelier CRAFT に参加し、現在はパートナーとして、戦略と素材・ものづくりをつなぐ役割を担っています。

Team:
その他のメンバーも、フランスおよびヨーロッパ各地で訓練を受けた建築家やデザイナーで構成されており、「手を動かしてつくること」を共通の理念として活動しています。

新しいプロジェクトを始めるとき、どのようなことを意識されていますか?また、クライアントや規模に関わらず、常に持ち続けている自分たちなりの指針はありますか?

長年にわたり制作を重ねる中で、私たちは少しずつ自分たちのやり方を形にしてきました。関心の核も明確になってきています。オブジェクトの転用、素材が持つ素の美しさ、組み立て、そして手仕事。私たちはそこに強く惹かれています。

私たちの哲学は、

Transforming design through making.

「つくることを通して、デザインを変革する。」

Transforming(変革する)
私たちが変えたいのは、建築のつくられ方そのものです。建築生産の工業化が当たり前になり、環境とのつながりが薄れていくことに、私たちの世代は違和感を抱いています。その感覚への応答として、建築の実践をアップデートしていきたいと考えています。

design(デザイン)
ここでいうデザインは、モノづくりだけを指すものではありません。小さなオブジェクトから建築、さらには都市までと幅広いスケールのデザインを含んでいます。

through making.(つくることを通して)
私たちは実際につくることで素材を理解します。観察し、触れ、試しながら、その性質を身体で確かめる。そして、後から解体したり修正したりできるように、元に戻せる「可逆性」も大切にしています。

さらに、私たちが常に大切にしていることがあります。強い物語性と明確なクリエイティブの方向性を示すこと。地域の資源を活かしてつくること。そして、共につくる人たちへの敬意を忘れないことです。

Photo by Victoria Tanto

作品や空間づくりにおいて、素材や製作方法、構造などはどのように選ばれていますか?また、よく一緒に取り組まれている職人や工房などはいますか?

私たちのデザインは、いつも「物語」から始まります。まず、その場所やプロジェクトの背景にある歴史・社会・文化を調べ、そこにあるストーリーを読み解きます。だからこそ、素材選びやデザインの判断は、常にその土地やクライアントの文脈に根ざしたものになります。歴史的な要素を参照する場合も同様です。

また、できる限り自分たちの手でつくることを大切にしながらも、優れた職人や専門家と協働することも私たちの制作に欠かせません。たとえば、ブルゴーニュの金属職人ステファン・プルニエ(Stéphane Prunière)とは、この8年間、継続して制作を共にしてきました。

Photo by Alexandra Mocanu

ニューバランスの新しい店舗でのプロジェクトは、什器から家具まで調和のとれた素晴らしいデザインです。どのようにしてこのデザインが生まれたのか、また制作の過程で印象に残っていることや苦労された点などがあれば教えてください。

今回のNew Balanceのコーナーは、パリのマルチブランドストア「Citadium」2店舗で手がけたプロジェクトです。

デザインの出発点は、120年の歴史を祝福しながら、同時にブランドが大切にしてきた“革新”を空間としてどう表現するか、という問いでした。そこで1900年代の家具をセレクトし、修復とアップデートを施してリテール什器として再編集しています。加える金属パーツはすべて元に戻せる構成とし、ワードローブはシューズディスプレイに、スツールはフィッティング用に高さを調整し、カウンターはレジへと転用しました。引き出しもアクセサリー展示として再構成しています。

制作過程でいちばん苦労したのは、理想とする1900年代の家具を見つけて揃えることでした。すべての家具が揃う前に空間のコンセプトを立てる必要があったため、まずは“まだ見つかっていない家具”を想定して設計を進め、実際に家具が見つかってから、その形やサイズに合わせてデザインを何度も調整しました。大変な進め方でしたが、その分、偶然出会えた家具の個性がそのまま空間の魅力になり、結果としてこのプロジェクトならではの独自性と完成度につながったと感じています。

Photo by Alexandra Mocanu

もうひとつ印象的なプロジェクトは、Backmarketのために手がけられたサウンドシステムです。中古電子機器の再生販売で知られる同社の理念と空間が、とても自然に調和しているように感じます。こうしたサウンドシステムをつくろうと思われたきっかけや背景について教えてください。

Back Marketは、リファービッシュされたテクノロジー製品のマーケットプレイスとして、電子機器を修理し長く使い続けることを大切にしているブランドです。「すでにあるものを、もっと活かす」という考え方を形にするため、効率よく空間を作れて、ブランドごとに柔軟にアレンジできる中古の素材を探しました。さらに、どの各都市でも手に入りやすい素材であることも重要でした。

そこで着目したのが、工場や倉庫の閉鎖などのタイミングで見つけることができる、中古の保管ラックです。調達したラックは手を加えて改修し、空間の用途に合わせて再構成しました。Back Marketのブランドカラーで塗装し、棚やワークステーション、什器、収納家具などへと使い広げています。一部は、再利用の可能性を示す家具として展開しています。

サウンドシステムも、同じ考え方でつくっています。再利用したラックを構造体にし、2台のスピーカーは視覚的な存在感と機能性の両方を担っています。また、音響機器や「ゲーミング」ステーションに中古の電子機器を使うことは、Back Marketの事業そのものを空間の中で表現するのに大切だと考えました。

Photo by Victoria Tanto

アトリエ・クラフトの作品は、文化的・都市的、あるいは環境的な文脈とどのように関わっているとお考えですか?

私たちは都市の密度が高い環境で育ち、スケートボードをはじめとするアーバンカルチャーに親しんできました。そうした経験は、特別に意識することなく、自然と今の仕事に影響しています。都市と関わることも、強い主張というよりは、都市の中で生きていたい、密集した都市環境を少しでも過ごしやすくしたい、そんな感覚に近いものです。社会的な視点や環境への配慮も、その延長線上にあります。

文化や環境への取り組みは、それ自体が目的ではありません。すべてのプロジェクトに共通して重なっている前提のようなものです。物語を描き、新しい試みを積み重ねながら、人のイメージや使われ方が少しずつ変わっていく。そのプロセスに関わることを大切にしています。

パラソル・ツリー・ハウスは、エコロジーの視点を持った印象的なプロジェクトですね。どのように始まり、どのような経緯やインスピレーションを経て最終的な形に至ったのか教えていただけますか?

パラソル・ツリー・ハウスは、ローマの歴史や風土、そしてヴィラ・メディチの庭園から着想を得てつくられたインスタレーションです。自然の中での生命の循環や、風景の成り立ちをヒントに、庭園とそこを訪れる人たちが心地よく過ごせる存在として計画されています。

この作品は、機械仕掛けの「木」をかたちにすることで、気候変動の時代において、人が自然とどう関わっていくのかを考えるきっかけをつくります。人工のパラソル状の屋根は日陰を生み出し、人はその幹の中に入って休むことができます。また、夏の強い雨のときには雨水を集め、雨が少ない時期には周囲の環境へゆっくりと戻す仕組みになっています。

アトリエ・クラフトの作品は、DIYと量産のあいだに位置し、既存の製造プロセスを活かしながら、ものづくりの新たな可能性を探っているように感じます。手仕事と工業的な技術、その両者の関係をどのように考えていますか?

私たちの仕事は、手仕事とセミインダストリアルの間にあります。工業的なものづくりは、効率や合理性という点ではとても魅力的ですが、その反面、場所ごとの条件や文脈に合わせて変えていくことが苦手です。すべてを同じようにつくってしまうところがあります。一方で、DIYや手仕事は唯一無二のものを生み出せますが、同じものを繰り返しつくるのは簡単ではありません。

だからこそ私たちは、工業の仕組みや技術をもう一度見直し、それをより小さなスケールや具体的な状況に応用できないかと考えています。職人技と量産の考え方を組み合わせることで、効率的でありながら、その場所にきちんと合った答えを生み出せると考えています。

「クラフト」という言葉は、いまや手仕事的なものから概念的なものまで、さまざまな意味を含んでいます。あなたにとって、現代のデザインや建築における「クラフト」とは、どのような存在でしょうか?

私たちが「クラフト」という言葉を選んだのは、手仕事や技術、ノウハウについて、国際的に通じる言葉で語りたかったからです。当時、この分野ではまだそれほど一般的な言葉ではありませんでした。私たちにとってクラフトは、ものをつくる「人」に立ち返るための言葉です。手を動かすこと、つくり手そのもの、そして素材を、もう一度会話の中心に戻したいという思いが込められています。

Photo by Victoria Tanto

これまで使ってみたいと思いながら、まだ使う機会がなかった素材はありますか?

硝子と陶器です。

最近よく聴いている音楽やお気に入りの曲を教えてください。仕事中に聴く曲でも、普段よく聴く曲でも。

流れている音楽は、そのときにプレイリストをシェアする人によって変わります。

Minh:Master of Puppets – Metallica
Roman:Welcome to the Machine – Pink Floyd
Lucas:On tombe, on réessaye – Ben PLG
Théo:The Complete Knock – Blood Orange
Lise:Bloody Well Right – Supertramp
Maggy:Liberation – Harold van Lennep
Anto:Neo Surf – 070 Shake × Gener8ion
Maud:Porque Yo – Pahua × Eva de Marce

Atelier CRAFT

Web / IG

Interviewer
Yusho Nishioka

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